◆俳優としての毅然とした表明
まるで純愛のような不倫を描くこと。そして濡れ場を濡れ場でなくすること。本作の岩田にかせられた使命は、見事に達成されている。
岩田からしたら、単なるサービスシーンではないぞ、自分は今、新名誠としてここに存在しているんだという俳優としての毅然とした表明にもなっているように思う。
第9話では、細部に伏線を張るかのごとく、慎ましくも凛々しい表情の数々をさりげなくしのばせる。例えば帰宅の道中、かつてみちが唐突にレスの告白をした(第1話)川辺のベンチでの場面。
ビールを買ってきた新名が、嬉しそうにコンビニ袋を掲げる瞬間の柔らかな笑顔。結局ビールを持ち帰ることになり、マンションのベランダでひとり、ビールをちびちび飲む切ない表情。
飲み込み、うつむいた瞬間に、唇をぱくっとふるわせる。ほんのわずかな微動のすべてが、岩田にしか出せない味わい深さではないか。
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