◆人はぐるぐる同じ過ちを繰り返している

――本作は30年前に書かれた河林満さんの同名小説が原作ですが、「昔はこうだった」ではなく、むしろ今に響く内容です。

磯村「正直、ずっと変わってないんだろうなと思います。実際、今もなお停水は執行されていて、何かしら社会と共存できなかったり、金銭で苦しんでいたりする人たちがいるわけです。

SNSなどの影響で情報が入りやすくなってきたことで、そうした人たちがいるということを目にすることも多くなりました。子どもを育児放棄する母親・父親がいるといったことも、社会問題として取り上げられることも多くなっています。人はぐるぐる同じ過ちを繰り返しているというか、同じ問題を抱えているんだろうと感じます。僕が去年主演した『ビリーバーズ』という作品も原作は1999年に書かれたものですが、公開日にちょうど大きな似た事件があったりして。結局社会は何も変わっていないんだなと感じました」

――ただ、こうして世に出すことには、やはり意義が。

磯村「もちろんあると思います。それがあるからこそ、参加したいという気持ちもあったので。どれだけ影響力があるかはわからないですけど、こうした作品を作ることは必要だし、届けていくことが、やっぱり映画の魅力の1つだと思うので。ひとりでも多くの人に刺さってほしいと思います」