◆続ければ続けていくほど、ループが生まれていく

渇水 磯村勇斗
――自分自身に対しても社会に対しても、そうした俯瞰的な目を持つよう心掛けるようになったのは、キャリアを重ねた結果ですか?

磯村「そうですね。のめり込んでしまった時期も、当然ありました。役に入りすぎて、本来の自分が分からなくなってしまったり。それがダメだというわけでもないんですけど、いろんな方から“どこかにちゃんと自分を置いておくことでバランスを取る。そうした俯瞰の目は大事だ”といったことを言われましたし、確かにそうだと実感しました。そのうえで、さらにゼロから1へと、自分で何かを生み出す力も必要な時代になってきた気がしています」

――俳優さんも、ゼロから1を生み出す力、意識を持つことの必要性は、確かに時代的に大きくなってきているかもしれません。

磯村「実際にみんなも動いているし、そうしていかないといけないと思います。それに、今は自分自身の経験や人脈も積み重なっていっている実感もありますね。広がっていっているというか」

――どういうことでしょう?

磯村「俳優の仕事って、ひとつひとつの仕事の単位で考えると、“集まって解散して”になるけれど、続ければ続けて行くほど“また一緒ですね”という人が増えて、ループが生まれていくんです。ゼロから1への意識が生まれてきたのも、こうやって続けてきて、いろんな出会いがあって、いろいろ見てきたからこそだと思います」

――今回の作品も、磯村さんのキャリアが引き寄せた結果でしょうし。

磯村「そうですね。今回はプロデューサーの長谷川(晴彦)さんが『ヤクザと家族 The Family』を観て、呼んでいただいたことが始まりでした。すごく嬉しかったですし、本当にありがたいです」