◆大スター松潤の存在が可能にするBL的な妄想

 第15回は、特にネット上を騒がせた。松平から徳川に改めた家康が、連戦のあと、信長に会う場面でのこと。「乱世を終わらせるのは、誰じゃ」と耳元で囁く信長が、家康の左耳をそのままパクっとする。いや、がぶりに近く、ニュルッと生々しい音が鳴る。

 あっけにとられる家康に対して、信長は、褒美を与える。ちいさな漆器の中には、金平糖が。ああ、信長のムチはつらいが、その分だけアメが、激あまなのだ。

 姉川の合戦で、浅井・朝倉軍を撃破した後の本陣でもまた同様な描写が。家康の首をきつく締め、今度は右耳に囁やき、がぶり。まるで吸血鬼の勢い。血が出るのではないかと思うくらい強く、長く、噛みつく。

 2度目となると、衝撃を通り越し、もはや恐怖。確かにこうした演出には、唖然としてしまうところがあるかもしれない。が、ここで、すでに(いや、当初から)感覚が麻痺している筆者は、あらぬ妄想を。それは……。

 作風がぐっと急旋回、松本潤の代表作「花より男子」シリーズ(TBS系、2005年~2007年)の劇場版『花より男子ファイナル』(2008年)でのワンシーンを思い出そう。無人島に放置された道明寺司(松本潤)が、海にざぶざぶ入って、ベストなタイミングで、牧野つくし(井上真央)のほうへ振り向くあの瞬間を。

 大スター松潤の存在が、永遠に感じられたあの振り向きが、もしやいつの日か、信長にも適用されるのではないか。正真正銘、そんなBL的な妄想を可能にする大河ドラマは、なんて素晴らしいのだろう。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】

音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu