◆恐ろしいくらい甘い「アメとムチ」

大河ドラマ「どうする家康」オリジナル・サウンドトラック Vol.1( ビクターエンタテインメント)
大河ドラマ「どうする家康」オリジナル・サウンドトラック Vol.1( ビクターエンタテインメント)
 この相撲場面は、現在の元康のトラウマ的記憶として、回想される。第4回では、絶壁から川へ飛び込む訓練の様子が描かれる。信長の指示で、男たちはどんどん川底めがけて、飛び込んでいく。

 これが青春ドラマのひとコマなら、水々しく、ごくありふれた場面として見ていられたかもしれないが、信長を中心に、男たちの雄々しい足元が取り囲む光景は、やっぱりどこかセクシャルで、生々しい。この生々しさ、明らかな男色の香りが、濃厚ではないか。

 そんな記憶が元康の頭に浮かぶ中、苦渋の決断の末、今川家を裏切り、清州城で信長に謁見する。入城する元康は、今にも縮みあがりそうだ(この場面での松潤の表情が、ほんとうに素晴らしい)。

 元康のことを「白兎」と呼ぶ信長は、彼を肉体的に屈服させ、精神的にも支配しようとする。元康が、今川家との和平を口にすると、上から見下ろし、顎のラインを撫でたかと思うと、激しい平手打ちを浴びせる。

 ひやぁ、なんて激しい「アメとムチ」なんだ、信長様! それでいて元康を撫でる瞬間の愛おしそうな眼差しは、恐ろしいくらい甘いけれど。