◆歴史を教わらない不幸

深沢:日本と韓国のあいだには、政権の方針にも左右されるところはありますが、常に火種があります。日本では嫌韓の空気が根強くある一方で、韓国のカルチャーが好きな人たちも大勢いますよね。そうした人たちが韓国に旅行に行ったときなど、知らないがゆえに現地の人と齟齬(そご)が生まれることもあると思います。知らない個人が悪いというわけではなく、歴史を教わっていないことで生じている部分も多いですよね。

ソウル 韓国旅行 明洞
――こうして小説などの作品をとおして、いまから知ることもできますね。

深沢:はい、ひとりの人物の生きざまをとおして歴史を感じることができるのではないか、という想いは執筆中、常にありました。知って、相手の立ち場に立って想像してみる。齟齬が起きるのはなぜだろう、どの立ち場から歴史を見ているのか、それによって同じものを見ていても感じ方がどう違うのか。

すべては理解できなくても、何か感じる部分があればそれを大事にしてほしいですね。そう思って、いろんな立ち場の人を登場させました。