歴史長編小説『李(すもも)の花は散っても』(朝日新聞出版)は、1916年(大正5年)の夏から物語がはじまる。皇族の長女として何不自由ない暮らしをしていた15歳の方子(まさこ)は、新聞記事を見て自分が婚約したことを知る。しかも相手は、朝鮮の王族。

と書くと、自分たちが生きるのとは遠い世界のことだと思われるだろうか。過ぎ去った歴史上のことだと感じる人もいるだろう。しかし歴史というのは不思議なくらいくり返し、いつ何どき同じことが起きるかわからない。だから、知る意味がある。

著者の深沢潮さんはいう。