◆100年前のヘイトスピーチ
深沢:これも人間の資質のようなものだからといって、人に暴力をふるったこと、命まで奪ったことを免責したいわけではありません。当時の朝鮮は日本の植民地だったので、こうした暴力の土台には支配-被支配の関係がある。そのことを踏まえ、何か明確な答えを提示するのではなく、起こったこと、起こりえたことをそのまま描きたいと思いました。
――そうした問題は、現在にまで持ち越されていると思いますか?
深沢:いまの時代は100年前と同じことをくり返そうとしている、と思わされることがよくあります。ヘイトスピーチという言葉は当時はありませんでしたが、李方子と李垠夫妻に投げつけられた言葉を見ると、現代のそれとほとんど変わらないことに気づきます。
深沢:先ほどミソジニーの話をしましたが、女性へのまなざしや女性が置かれた立ち場も、いいほうに変わったことも多々ある反面、変わらないことも多い。そのことに気づいてもらいたいと思いながら書いた作品です。
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