◆「それ有名なブランド品なんだぞ」

「え?」

「意味がわからず思わず声を挙げた」と話す美恵さんは、奥さんの意図がわからずに混乱したそうです。

「それ有名なブランド品なんだぞ」
「まだ使えるのよ。もったいないから」と重ねて言うけれど、持ち手は焦げて錆びの浮いたフライパンをこちらに渡そうとする奥さんの姿は、美恵さんには受け入れられないものでした。

「いえ、フライパンは間に合っているから……」と何とか答えた美恵さんに、「それ、有名なブランド品なんだぞ。名前を見てみたらいい」とおどけた調子で言ってくるのは旦那さん。

 そういう問題じゃない、と美恵さんは思ったけれど、角を立てるのも悪いと思って

「ありがたいけれど、この間買ったばかりのものがあって」 と、とっさの嘘を口にしました。

◆不用品を「思いやり」で押し付ける夫婦

 そうか、と旦那さんは残念そうに答えましたが、問題は奥さんのほうでした。

「せっかく用意したのに。じゃあ、ブロックは持って帰る? この間、足りないと言っていたでしょう」と袋を漁ると、「これ、まだ使えるから」と子どもの落書きがされた一つをつまみ上げました。

 薄汚れたブロックは、「触るのも嫌でした」と美恵さんは振り返ります。