妄想と現実が入り混じった実体験

 第1話「うずく影」は15分ほどのショートムービーで、倒錯的な井口昇ワールドへの序章的な役割を果たしている。ヒロインの由美(山本愛莉)は、同僚の哲也(大野大輔)からのパワハラに悩まされていた。追い詰められた由美は、妄想上の恋人を具現化させ、哲也への逆襲を開始する。

井口「僕自身、子どもの頃はイマジナリーフレンドとよく遊んでいましたし、中学に入ってからも幻覚をたびたび見ていました。妄想と現実が一緒になっていたんです。第3話の拒食症という設定の主人公(九羽紅緒)も、僕自身がそうでした。高校までは食事するのが苦痛で、ひどく痩せていたんです」

 パワハラを題材にした第1話だが、このエピソードの反応は男性客と女性客とではっきりと割れるそうだ。

井口「男性からは『シュールな話だね』という曖昧な感想がほとんどですが、女性は『いるいる、こういうパワハラ野郎は実際にいる!』とすごくリアルに反応してくれます。男がいかに職場でのハラスメント的な行為に無自覚なことが分かると思います。僕自身、パワハラ気質の監督が苦手で、若手時代には嫌な目にも遭いました。第1話は男性視点ではなく、女性からの視点で描いています。山本愛莉さんの美しい足とは対照的な、僕の汚い足をさらけ出しているので、すごく恥ずかしくもあるんです(照笑)」