個性の強い映画監督たちの中でも、より際立った異能ぶりで知られているのが井口昇監督だ。劇団「大人計画」の役者として活動する一方、自主映画『クルシメさん』(98)や『恋する幼虫』(03)はレイトショーで注目を集めた。米国のビデオメーカーの依頼を受けて撮り上げた『片腕マシンガール』(07)は、ガールズアクションものの大ブームを呼ぶことになった。

 昭和特撮ドラマの世界をリブートした『電人ザボーガー』(11)や中川翔子主演のSFアクション映画『ヌイグルマーZ』(14)も、井口昇監督ならではの作品だった。身体や心の一部を欠損した主人公たちが現実社会に懸命に向き合おうとする姿が、井口作品では繰り返し描かれてきた。