◆迫真の演技があまりにもせつなくて

 皿を洗いながら、つまりありふれた日常の暮らしの中で、夫は非日常の告白をする。それを聞いたときの奈緒の手が小刻みに震え続け、永山瑛太の感情が流れ出る鼻汁に象徴されていた。

 奈緒は家を走り出るが、靴がうまく履けないまま飛び出し、歩きながら何度も履き直す。その後は放心状態で前のめりになって歩き続ける。本当にショックを受けたとき、おそらく人はこうなるのだろう。やりきれない思いを抱えたまま歩くとき、頭だけが前のめりになり足がついていかない。

 一方の夫はしばらく無意味に皿を洗い続けるが、自分が何をしたかに思いが至り、あわてて家を飛び出すも、もちろん妻の姿はない。手足がバラバラになったような姿勢で左右を見渡す永山瑛太。このふたりの演技は圧巻だった。

 不器用だが、みちを心から愛している自分に、浮気をしたからこそ気づいた陽一。少しずつだが彼は変わろうとしていた。そんなときに浮気を白状せざるを得なくなった。