◆世界的巨匠監督が絶賛するに違いないシンプルな演技とは

6話より
6話より
 ある地点からある地点へ視線を動かし、また同じところへ戻す。この場面での演技は、驚くほどシンプルな動きだ。シンプルであるが故に、それは想像以上に難しく、高度な演技のセンスが必要になる。

 ここで、『サイコ』(1960年)などで有名な世界的巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督の話題を。ヒッチコック監督は、単なる視線の動きをシンプルにできない俳優をとにかく嫌った。俳優からしたら、できるだけ感情豊かにキャラクターを演じたいから、シンプルな動きにも何かしらのアクセントをつけたいもの。

 そのアクセントがむしろ邪魔になる。AからBへ視線を動かすだけでいいところを内面の変化に合わせた無駄な動き(例えば、目を泳がせたり)によって台無しにしてしまうのだ。だからきっと、新名役の岩田のシンプルな演技を見たら、ヒッチコック監督も絶賛したのではないかと思うのだが。