ただ、「女性が働きやすい社会に」とか「男性も家事をやる時代」とはよく言われるものの、まだまだその通りに実行するのは難しいのも現状だ。意識的にか無意識的にかはわからないが、“女らしさ”や“男らしさ”を求めているのはほかでもない自分自身という可能性もある。それはもちろん本人のせいではなく、社会の刷り込みによって、そういうことに無自覚になっているということもあるだろう。頭ではわかっていても、いざ自分事となると途端に理解することが難しくなったりもするのだから人間は複雑だ。こうしたテーマから逃げられない世代のアラサーである私は、その矛盾をひしひし感じている。

 一方で、現代人のリアルな悩みを絶妙なバランスで代弁してきたドラマというカルチャーが私たちにもたらしてきた影響もまた大きいことは確かだ。今、ようやくステレオタイプや偏見が解かれ、許容され始めたことが、10年、20年前のドラマですでに問題提起されていた、ということはよくある。過去作の中には女性のセンシティブな側面に鋭く切り込む作品もあり、ギョッとすることもあったが、それもまた時代に合わせた問題提起の仕方だったのかもしれない。実際、私が自分の中のちょっとした違和感に気づけたのも、過去にそういう価値観を提示してくれたドラマを観てきたからでもある。

 一度根付いた価値観はそう簡単には変えられない。でも、社会問題をあらゆる角度から捉え、フラットな目線で描こうと試みてきたドラマというカルチャーは、私たちに少しずつ変化をもたらしてくれているとも思う。『わたしのお嫁くん』や『隣の男はよく食べる』のような目線を持った作品は、今後も生まれ続けるだろう。その先で、私たちの抱える悩みが氷解した時代が来ることに期待したい。