九段理江の「Planet Her あるいは最古のフィメールラッパー」と題された短編小説も、「枠組み」の欺瞞を回避しつつヒップホップを取り巻く複雑な構造を立体的にあぶり出す。
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ジムで出会う高齢女性の個人的で具体的な、そして社会に振り回された体験がヒップホップへと自然に接続し昇華されるさまに、「フィメールラッパー」の本質を見るのだ。
Doja Cat「Kiss Me More」
「フィメールラップ」ひいては「ヒップホップ」の文化的豊穣とは、フィメールラッパーの数が増え、優れた音源が多く聴けるようになるという次元にとどまるものではない。ラップが様々な思想や表現を刺激し、まるで連鎖するかのように既存の社会の見え方を転覆させること――そのアクロバティックで革命的な一つひとつが、ユリイカ「〈フィメールラップ〉の現在」には凝縮されている。