Awich「口に出して」

 それだけではない。

 岩下朋世は、論考「Tha 女子会 Is Hot」において、まさに「枠組み」そのものでしかない「フィメールラップ」という呼称について功罪を並べつつも、「もしフィメールラップを手放さずにいるならば」と想定したうえでクリティカルな主張を展開する。ヒップホップのMVにおいて“ホット”な身体が乱舞する様子は表層だけ見ればいくつもの批判を誘うことができるだろう。

 けれどもここでは、「「女」をモノ化するような表象を反復しながらも、異性の欲望を煽りつつも引き受けず、むしろ女同士のつながりをアピールする」ことが「(…)フィメールラッパーとして一括りにされ、男性中心的なラップゲームにおいて周縁に追いやられがちな状況を乗り越えるための戦略のひとつと言えるだろう」(P.233)と繋げられる。