◆身近にヤングケアラーがいたら?

水谷緑『私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記』(文藝春秋)
水谷緑『私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記』(文藝春秋)
――親に放任されているヤングケアラーが非行に走ってしまうことは多いのでしょうか?

水谷:私が取材した中では、「グレたくてもグレられなかった」という方が何人かいました。「グレたら負けだ」と思っていたり、非行に走る暇もなかったそうです。冷めた感覚の方が多いので「グレても何も変わらない」と現実的に捉えられていました。

――身の回りで「ヤングケアラーかもしれない子供」がいたら、どう接するのがいいと思いますか?

水谷:人は否定されると絶対に心を開きません。正論で追い込まない方が受け入れられやすいと思います。

――ヤングケアラーの親を非難したりすると心を開いてもらえないかもしれないですね。

水谷:ただ、難しく考えなくても隣近所の方が声掛けをするだけでも救いになると思います。元ヤングケアラーの方が、「隣の人が気にかけてくれて時々おかずを持ってきてくれたことが嬉しかった」と言っていました。子供の時は家事で精一杯で「何でこの人はご飯を持ってくるんだ」と思っていたけど、大人になってから思い出した時に嬉しくて涙が出たのだそうです。すぐには解決に繋がらなくても、時を経て心の癒しになることもあります。

いつも1人で買い物をしている子や、家の修理業者との対応を子供がやっていたりしたら、周りの人が「こういう子がいるんだな」と認識しておくだけでも全然違うと思います。