ラテン~ロックが「情熱」を呼び覚ます『INDEPEMDIENTE』と、その後の“ミクスチャー”の確立
次作『INDEPEMDIENTE』(’07)ではドラムンベースやダブ/レゲエ、エレクトロニカの要素を後退させつつ、パーカッシブな側面はそのままにラテンおよびロックの側面を強調することで、時に熱く、時にハートウォーミングな歌モノのテイストが前景化してくる。熱さ・激しさをたたえた例としては「Develop the music」「El Alma」、暖かさ・優しさが表れたものでは「few lights till night」「夢で逢えたら」などが代表格だろう。また、前作までに見られた内省的な空気がほぼ霧散し、ポジティブなムードに満ちている点も特筆に値する。このアルバムをもって、Dragon Ashは『HARVEST』以来の長い「内省の時代」を抜け出したように思える。
その後、『FREEDOM』(‘09)ではさらにロック色が強まり、「Mixture」というかつてのDragon Ashを象徴するような名前の楽曲も収録されている。そして、その次作のタイトルはまさに『MIXTURE』(‘10)と銘打たれ、それまでの音楽遍歴をロックを軸に見事にまとめ上げた、文字通り「ミクスチャー・ロック」の雄としてのDragon Ashの帰還を告げる内容となった。以降の彼らの音楽性が、基本的にこの『MIXTURE』で確立されたバランス感覚の上に成立しているように見える点からも、このアルバムは彼らにとってある種のマスターピース的な作品だろう。
前述したキングギドラ(Zeebra)からのディスが影響したのか、Dragon Ashはブレイク以来の武器であったヒップホップ色を大きく後退させ、その分、新しい音楽性を次々に取り入れていった。この時、Kjおよびバンドが音楽活動を止めることなく続ける道を選び、結果として日本のメジャーバンドとしては(2020年代以降の視点から見てもなお)極めて異色で独自性が強い作品群を生み出していったことは、もっと称賛されるべきであり、まだまだ評価が足りていないように思える。