切実な声をあげるファンからの署名活動も開始
それほどまでにジャニーズのファン層は厚く、芸能事務所として絶大な権力を持っているということでもあるのだろう。確かに、ここまで大々的に喜多川擴氏の性加害が問題になったことによる、ジャニーズのタレントの出演作への商業的な影響についてはあまり語られてはいない。「Eternal Producer:ジャニー喜多川」とクレジットが入った、 映画館で生中継がされている『滝沢歌舞伎ZERO FINAL』はオカモト氏の記者会見があった後でも連日満席の大盛況だ。
だが、タレントを応援したいと願いつつも「今のままではできない」と考える、いやジャニーズ事務所に強い怒りを覚えているファンもいる。事実として、「ジャニーズ事務所の所属タレントをこれまでこよなく愛し、応援してきた者」による「PENLIGHT ジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」が発足し、具体的な対応を求めるための署名活動が行われている。そのTwitterアカウントでは、ファンからの切実な声が続々と掲載されているのだ。
これらの声を聞いても、ジャニーズ事務所はファンを無視し続けられるのだろうか。それは「気兼ねなく、心から推しを応援したい」と願うファンの心を踏みにじっていることに他ならない。今は商業的に影響が少なくても、このままではファンの心はますます離れていき、今後は大きな影響が出るだろう。長期的なビジネス面を鑑みても、ジャニーズ事務所は被害者を第一にしつつ、優先的にファンへの釈明をするべきなのに、そうしないのはやはり不気味だ。
なお、「PENLIGHT」では賛同者の中にトランスジェンダーへの差別などで問題視された人物がいることが指摘されており、その点について立場表明もされているのだが、残念ながら納得できる内容ではなかった。あくまで賛同者として名を連ねており、筆者個人は元の主張に同意しているため署名を取り消したりはしないが、この点には真摯に向き合っていただきたい。
他にも、4月17日に「24時間テレビ」のメインパーソナリティーをジャニーズ事務所所属のなにわ男子が務めることが発表されており、ファンからの祝福の声が上がる一方で、カウアン氏の記者会見の5日後ということもあって激しい反発を受けていた。
そのなにわ男子のファンも喜多川擴氏の性加害を完全に無視できている人などほとんどいない、複雑な心境を覚えながらも応援する方もいると思うのだが、こうしたことのために「ジャニーズ事務所のタレントのファン」へ十把一絡げな嫌悪を募らせたり、ファンとそうではない人との溝がますます深まっていくのも残念だ。タレントたち本人にいっさいの責任や罪がないことは言うまでもない。やはり「ファン層を広げる」というビジネス面を鑑みても、事務所はこのことに向き合わなければならないだろう。