「まず一歩」前進しても、これでは不十分

 だが、その文章では被害者への謝罪も、賠償についても綴られていない。また、オカモト氏の記者会見があった4月12日時点でのジャニーズ事務所からのコメントは「本年1月に発表させていただいておりますが」などと前置きをする、「すでにちゃんとしている」とだけ訴えるかのような中身のないものだった。

 そもそも、BBCのドキュメンタリー番組により「再び」暴かれた喜多川擴氏の性加害は、1960年代からすでに噂されており、1999年には週刊文春で報道され、2004年には喜多川擴氏の性加害は事実であると認定されている。オカモト氏が15~20回もの性被害を受けたのは2012年から2016年と、それよりもかなり後だ。

 つまりは、問題が明るみになった時点での対応ができていれば、性加害を受けなかった者がいる。それは、社内で“黙認”をされてきたということでもあるだろう。喜多川擴氏が故人であっても、その事実を踏まえてジャニーズ事務所は説明責任を果たすのはもちろん、それ以上の賠償などのさらに重い責任を負わなければならないはずなのに、この文書だけではまったくもって不十分だ。