3人の個性がぶつかる過剰さが、唯一無二のオリジナリティに

 2000年代中盤という時期に、国内屈指のラップスキルを持ち合わせたラッパーがここまでディスコ~シンセブギー的なトラックを選ぶ例はほかにほとんどなかったと思われる。先行するアーティストで近い音色・ムードのサウンド用いてキャッチーな音楽性を展開した例としてm-floを挙げることもできるだろうが、SOUL’d OUTはm-floとは異なり、専任のシンガーを置いた時期もなければフィーチャリング・ボーカルを入れることもほぼなく、Diggy-MO’の歌を軸のひとつに置いた楽曲制作を最後まで貫いた。歌ごころのあるフック、“ヒップホップ”的イメージに囚われないポップなトラックという観点ではRIP SLYMEも同時期に活躍していたが、RIP SLYMEがあくまでヒップホップのフィールドからメジャーデビュー後に幅を広げていったのに対し、SOUL’d OUTは前述のように元々の立ち位置からヒップホップの領域をはみ出していた。非常にスキルフルなラッパーが堂々とポップス的なスタンスに立ってもよい、というキャリアの自由を日本で知らしめた彼らの功績には非常に大きいものがあり、R-指定(Creepy Nuts)をはじめ、直接的~間接的に彼らの影響下にあるアーティストは少なくないと思われる。

 ジャム&ルイスやディスコからの影響を軸に、「時代の流行」に背を向けて果敢なサウンドを展開したトラックメイカー。ザ・ルーツに衝撃を受け、ひとりはアンドレ3000ばりの個性を持つ超高速ラップの使い手、もうひとりはミクスチャーバンドにも出自を持つヒューマンビートボックスの巧者という2MC。そんな1人ひとりが強烈な個性派であるSOUL’d OUTは、どの楽曲にも全員の個性があまりに色濃く反映され、過剰ともいえる情報量を持つ。音数や展開を抑えたシンプルなトラックメイク・作曲が主流になって久しい昨今、SOUL’d OUTのオリジナリティは相対的にますます強まるばかりだ。彼らはこの先も当面、唯一無二の存在であり続けるだろう。

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本稿で紹介した楽曲を含む、SOUL’d OUTのファンク/ディスコ色が強い楽曲を集めたプレイリストをSpotifyに作成したので、ぜひご活用いただきたい。

B’z、DEEN、ZARD、Mr.Children、宇多田ヒカル、小室哲哉、中森明菜、久保田利伸、井上陽水、Perfume、RADWIMPS、矢沢永吉、安全地帯、GLAYなど……本連載の過去記事はコチラからどうぞ