ジャム&ルイスを敬愛するShinnosukeの「非ヒップホップ的」トラック

 SOUL’d OUTを異端たらしめる大きな要因に、Shinnosukeが手がけたトラックの存在がある。インタビューでも「HIP HOP的なトラックを作らないことを意識している」「ティンバランド以降のバウンス系をわざと避けている」「ソウル・ミュージックやファンクが好き」( 「WOOFIN’」2003年5月号、シンコーミュージック)と明言している通り、彼の手がけるサウンドは80年代のディスコ~ダンスクラシックやシンセブギーの要素が強く、90年代中盤~2000年代のヒップホップにおけるビートの潮流とは良い意味でかけ離れている。そんな彼がリスペクトするのが、ジャネット・ジャクソンやアレキサンダー・オニールをはじめ、数多くのシンガーをスターへと導いた、米国を代表するR&Bプロデューサー・ユニット、ジャム&ルイスだ。

 ジャム&ルイスのスタイリッシュでメロウなコード感・音色に強いファンクネスを織り交ぜる構成は、間違いなくSOUL’d OUTの音楽性にも通じるものがあるだろう。また、SOUL’d OUTのセカンドシングル「Flyte Tyme」(‘03)のタイトルは、ジャム&ルイスが立ち上げたレーベルの名前(および彼らが参加していたバンド=ザ・タイムの前身となるグループの名前)から名付けられており、この点からも深い敬愛ぶりが窺える。

 この路線では、シンセブギー的なサウンドに環境音を織り交ぜるセンスが光るシングル「イルカ」(‘05)も忘れてはいけない名曲だ。そして、この「イルカ」のB面で、日本でもダンスクラシックとしてお馴染みのカール・カールトンの81年のヒット「She’s A Bad Mama Jama(She’s Built, She’s Stacked)」をカバーしている点からも、ShinnosukeおよびSOUL’d OUTの80s R&B~ファンク志向は明確だろう。

 Shinnosukeは完パケに近い状態のトラックをMC2人に持ち込み、楽曲を完成させていくことが多かったという。メロディアスな彼のトラックはラップが乗る以前の段階で強い個性を持っているが、MC陣が良い意味で寄り添うことなく、各々の個性全開でトラックにぶつかっていったからこそ、SOUL’d OUTの音楽は唯一無二の過剰さを備え、異端の存在となっていったように思える。次章では、2MCそれぞれの特色について触れていこう。