ビート&アンビエント・プロデューサー/プレイリスターのTOMCさんが音楽家ならではの観点から、アーティストの知られざる魅力を読み解き、名作を深堀りしていく本連載〈ALT View〉。今回は、2000年代に「ウェカピポ」「To All Tha Dreamers」などのヒットを飛ばし、2014年の解散後もいまなお愛される異端のヒップホップ・グループ「SOUL’d OUT」について、なぜ彼らが特異な存在だったか解説していただきます。
みなさんはSOUL’d OUTについてどのようなイメージをお持ちだろうか。Diggy-MO’の独特の声質による超高速ラップや「ア アラララァ ア アァ!」などに代表されるユニークなフレーズ、そしてキャッチーなメロディのサビが織りなす、ヒップホップとJ-POPの境界線上に立った音楽――こうした印象を持っている方は多いかもしれない。だが、彼らの特異な魅力を表すには、まだ言葉が足りない気もする。
ヒップホップが日本国内に根付きつつあった2000年代半ば、驚異的なラップスキルの2MCを擁する彼らは、そもそもなぜあの音楽性を選んだのか。特に、あの時代にディスコ~ダンスクラシックやシンセブギー色が強いトラックメイキングを貫いたShinnosukeを核とするサウンド面まで含めた言及となると、現状では大幅に不足しているように思えてならない。
R-指定がヒップホップに目覚めたきっかけとして「1000000 MONSTERS ATTACK」(‘04)を挙げたことが話題を呼んだり、昨年末には『NHKのど自慢』で歌われたことをきっかけに「ウェカピポ」(‘03)が再注目を浴びるなど、2014年の解散後もネットを中心に定期的に話題を呼ぶ彼らの楽曲。本稿は、「日本のヒップホップ」「J-POP」いずれにおいても異端で孤高の存在であるSOUL’d OUTがなぜ今なお多くの人を惹きつけるのか、その謎を解き明かす試みだ。