日本でも相次ぐ無差別大量殺人

 現行犯逮捕され、裁判が始まることで、ようやくオルガはその存在を世間から認められることになる。あまりにも悲しく、歪んだ承認欲求だった。裁判の中でオルガは「プリューゲルクナーベ」という聞き慣れない言葉を口にする。この言葉にはどんな意味があるのだろうか?

トマーシュ「ドイツ語で“いじめられっ子”という意味の言葉ですが、オルガがいつどのようにしてこの言葉を知ったのかは分かりません。この言葉の語源を調べたところ、ヨーロッパの貴族制度では王室の王子など身分の高い者が罪を犯した場合に、身代わりを裁判所に引き渡す制度があり、それが本来のプリューゲルクナーベということなんです。『私はみんなの身代わりとして罰を受けます』といった意味合いで、オルガは使ったようです」

 自由を失ったチェコで、社会全体の生贄にオルガは選ばれてしまった。少なくとも彼女自身はそのように感じていたようだ。

 事件から2年後、オルガは絞首刑となった。彼女自身が望んだ結果だった。オルガが起こした犯行は、一種の「拡大自殺」だったと言えそうだ。