もしも、彼女が小説家になっていれば……
トマーシュ・ヴァインレプ監督とペトル・カズダ監督は、オルガ・ヘプナロヴァーを主人公にした物語を映画化したが、彼女が起こした犯罪を決して肯定的には捉えてはいない。オルガに対して一定の距離感を保ち、犯行に至るまでを実にクールに追っている。事件を起こし、死刑になることを望んでいたオルガだが、死刑執行が現実のものとして迫ってくると、それまでのポーカーフェイスから人間的な表情を見せるようになる。両監督は、多くの資料を読み、オルガの内面についての理解に努めたそうだ。
ペトル「オルガは大変な読書家で、頭もよかった。うまく人間関係をつくることができず、職を転々としたけれど、最終的な職業だったドライバーは当時のチェコでは女性がなることは珍しかった。先進性に富んだ女性でもあったんです。それでも、彼女は心の中にいた悪魔的なものから逃れることができなかった」
トマーシュ「もしも、オルガが自分自身を主人公にした小説を執筆していたら、とても面白い内容になっていたんじゃないかな。偽名を使ってね。そして、その小説がベストセラーになり、彼女の存在が世間に認められていれば、きっと違う人生が開けていたはず。もちろん、当時のチェコでは小説を発表することは簡単なことではなかったわけだけど、オルガが何か表現する手段を持っていれば……とは思うよ」
ペトル「僕らの場合は、映画を撮っていることで犯罪に走らずに済んでいるわけだしね(笑)」
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