◆相性は悪くない2人、だからこそもどかしい
楓はというと、誠だけでなく部下への接し方も厳しく、不快感を覚えそうになるが、好き勝手で仕事に打ち込んでいるわけではない。編集長の圭子(MEGUMI)から言われた「結婚したり出産したりするとさ、会社って親切なフリして時間に余裕のある部署に回そうとするじゃん」「そういう女の必死さって(男には)わかんないんだよ。油断したら足をすくわれる怖さ、積み上げてきたキャリアを一瞬で奪われる危機感」という話に強く同意している。
楓は仕事にかける情熱が人一倍であり、だからこそ、女性であるということでいつ主戦場から外されるかもわからない恐怖心と戦っている。だからこそ、家を空けることが多いのだ。睡眠時間、さらには誠との時間を削ってでも仕事に邁進せざるを得ない様子。であるならば、そういった不安を楓が誠に話せていればもう少し状況は変わったのではないか、と思えてならない。
なんにせよ、どちらかが悪いわけではなく、決して相性が悪いわけでもない2人だからこそ、コミュニケーション不足によって心が離れていってしまうことにもどかしさを覚える。それと同時に、夫婦生活を“いつも通り”で過ごすことの危険性も感じた。