人と疎遠になることでうつになりやすくなる

――ほかにもテレワークでうつ病になる原因はありますか。

井原: これはとても大きなことで、人と接する機会が少なくなると、人はうつになりやすくなります。
会社にいて同僚と会うとか、営業先で馴染みのクライアントに会うとか、誰かしら人と会う機会が仕事の中ではあったはずですが、テレワークになるとそれが一気になくなります。私たちには直接会わなければ伝わりにくい、人の空気感というものがあるんです。

直接的に声が聞こえる関係、顔が見える関係が本来の人間関係です。人と人との血の通った人間関係がなくなると人は落ち込んでいくものです。

――では、孤独感を感じないようにするには、どうしたらいいのでしょうか。

井原: 例えばコミュニケーションにおいてはメールや音声通話だけではなく、ときにはテレビ通話をしてみましょう。相手の顔が見えるほうがコミュニケーションとしては自然なことだと思います。

予防には生活習慣の乱れ、運動不足、そして孤独感に注意を

テレワーク業務がきっかけでうつになりやすい要因の1つ目は、起床就床時刻が崩れやすいということ、2つ目は歩く量が減ることによる運動不足、3つ目は人と会う機会が減ることです。テレワークをはじめて、なんだか調子が悪い、落ち込みやすいという人は、この3点を意識して生活を見直してみてはいかがでしょうか。

【プロフィール】
井原裕(いはら ひろし)
1987年東北大学医学部卒業。1994年自治医科大学大学院修了、医学博士。ケンブリッジ大学留学後、国立療養所南花巻病院勤務。順天堂大学精神科准教授に就任後、獨協医科大学越谷病院こころの診療科教授。病院名の変更に伴い、現在、獨協医科大学埼玉医療センターこころの診療科教授。専門は、うつ病、プラダー・ウィリー症候群、司法精神医学、児童青年期精神医学、精神病理学、総合病院精神医学。臨床医としては3歳から100歳までの年齢層に対応。近年、稀少疾患プラダー・ウィリー症候群を120例ほど診察。著書に、『生活習慣病としてのうつ病』(弘文堂)、『精神鑑定の乱用』(金剛出版)、『思春期の精神科面接ライブ』(星和書店)、『うつ病から相模原事件まで―精神医学ダイアローグ』(批評社)、『薬に頼らないこころの健康法』(産学社)など。

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