少女から大人の女性への吊り橋を危なっかしく渡るサロールを、恋愛経験も豊富なカティアが人生の先輩として導いていく。本作はモンゴル発の“歳の差”シスターフッドムービーとも言えそうだ。
親ソ連時代に欧州文化に親しんだカティアと、いつもヘッドフォンで音楽を聴いているサロール。世代の異なる2人をつなぐキーアイテムとして、ピンク・フロイドの世界的なベストセラーアルバム『狂気』が使われている。1970年代~80年代、ピンク・フロイドは大変な人気を誇り、旧ソ連でのライブ公演も行なった。1973年に発表された『狂気』は、色褪せることのない名盤だ。
センゲドルジ「芸術には音楽が欠かせません。僕のアトリエにはプロ仕様の音響システムを設置しており、いつもピンク・フロイドを流しているんです。ピンク・フロイドは時代を超越した存在であり、僕は彼らの音楽から多くのインスピレーションを受けています。もちろん、僕は新しい音楽も大好きで、ライブにも行きます。モンゴルで人気のマグノリアンはお気に入りで、今回の映画音楽を担当してもらっただけでなく、出演もしてもらったんです(笑)」
センゲドルジ監督は「これからも今のモンゴル社会を撮り続ける」とのこと。本作が描いたモンゴルの若い世代が感じる「生きづらさ」は、日本の若者たちが抱える不安や悩みと通じるものが多そうだ。サロールがさまざまなトラブルを乗り越え、美しく成長していく姿に魅了される日本人も続出するに違いない。
『セールス・ガールの考現学』
監督・脚本・プロデューサー/センゲドルジ・ジャンチブドルジ
出演/バヤルツェツェグ・バヤルジャルガル、エンフトール・オィドブジャムツ
配給/ザジフィルムズ 4月28日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
©2021 Sengedorj Tushee, Nomadia Pictures
zaziefilms.com/salesgirl