◆主人公の繊細な感情を表現
こうしたはるたんのモノローグは、コミカルなドラマ要素を強調するには十分だった。田中圭が茶目っ気たっぷりに首を振りながら、心のなかでつぶやく様子が作品全体の推進力となっていたし、営業所内の男性社員が次々と恋愛模様を展開させるドラマの勢いを加速させる効果もあった。
主人公の驚きの感情を中心に、『おっさんずラブ』は、モノローグが喜怒哀楽を表現するのにうってつけであることを示した。とは言え、これはまだ初期段階。モノローグが主人公の感情をより繊細に、思い切りピュアで、切ない心の声を表現するには、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系、2020年、以下、『チェリまほ』)まで待たなければならない。
『チェリまほ』は、赤楚衛二が連ドラ単独主演を果たした記念すべき作品。赤楚のもっさり感満載の安達清役が究極のはまり役だった。さえない同期の安達に対して密かに恋心を寄せるのが黒沢優一。黒沢を演じた町田啓太の完璧なたたずまいが赤楚との相性が抜群だった。非の打ち所のないコンビを組む赤楚と町田が、繊細なモノローグでどれほど胸キュンを量産してくれたことだろうか。