◆それぞれの視点から語るセパレート方式
『チェリまほ』は、基本、安達のモノローグが語りの中心で、ここぞという場面で黒沢のモノローグがはさみこまれた。それを今度は、全話の前編後編で、主人公ふたりそれぞれの視点をセパレート方式にしたのが、『美しい彼』(MBS、2021年)である。
『美しい彼』では、まず、高校の同級生でカリスマ的な存在である清居奏(八木勇征)に対する、平良一成(萩原利久)の崇拝に近い一方的な気持ちがモノローグで延々と語られる。青春時代を今まさに生きている高校生の甘酸っぱく、憂いを帯びた気持ちがうまく表現される平良の語りが前半を占める。
平良と清居が高校を卒業したあとの後半パートでは、役者になった清居のモノローグにバトンタッチ。第5話、「大きくなったら、アイドルになりたかった」ではじまる清居のモノローグからは、卒業後、平良からの連絡をずっと待っていた清居のほうがいかに健気な乙女だったかがわかる。八木勇征のモノローグのリズムが刹那的な時間を刻むようでたまらなく美しい。
自分が、どうしてあんな変人の平良を好きになってしまったのか。清居は、前半部の平良に負けず劣らず、胸中をだだ漏れにしていく。