◆効果的に活用された最初の好例

 田中圭主演の『おっさんずラブ』(テレビ朝日系、2018年)の大ヒットは、BLドラマ史上の転換点だった。天空不動産の営業所に勤務する主人公・春田創一が、「はるたん」の愛称で親しまれ、上司と後輩から同時に恋される“胸キュン”なストーリーが広く視聴者に支持されたのだ。

 発端は、ある朝、二日酔いで吐きそうな春田が、通勤バスに乗っていたところ、痴漢に間違われる場面から。隣に乗り合わせていた営業部長の黒澤武蔵(吉田鋼太郎)が、相手女性の誤解を解いてくれ、春田は難を逃れる。が、バスが急停車した衝撃で、春田と黒澤は車内で抱き合う体勢に。

 黒澤のスマホを拾い上げると、待ち受け画面に自分の写真が。さらにパソコンには数々の盗撮画像があり、春田は思わず目を疑う。なんで自分の写真が……。ここから春田の心の声がダダ漏れ状態になる。BLドラマ世界を活気づける主人公のモノローグが効果的に活用された、最初の好例ではなかったかと思う。