「逸話」でのラップと歌を並列に披露するスタイルも素晴らしいが、「GONE」では、ラップを進めていくうちに感情が高まり歌へと飛躍してしまう姿もおさめられている。ラップをメロウな形に寝かせることで歌と化すような不思議なフロウを見せる場面もあり、このシンガー/ラッパーの未完の才能を感じ惚れ惚れしてしまう。
Tokyo Gal「GONE」
SZA『SOS』のロングヒット以降、妖艶な魅力を込めたカリ・ウチスの『Red Moon In Venus』や官能的でドリーミーなサブリナ・クラウディオ『Archives & Lullabies』、クラブサウンドとアンビエントを高次元で融合したケレラ『Raven』、カッティング・エッジな方向へ振り切ったLiv.e(リヴ)『Girl In The Half Pearl』など、今年に入り海外では一段と表現力豊かなR&B作品のリリースが相次いでいる。
そして国内R&Bシーンも、近年現れたニュー・カマーが非常に充実した作品を次々に発表している中で、トレンドとしてもどの方向に転ぶかわからない局面を迎えている。
現在の混沌とした状況がいかなるベクトルへ向かっていくのか、それともケイオティックなまま個のタレントがただただ多方面で生まれ続けていくのか――リズムに身を任せ心躍らせながら、その動向を見守っている。