――『機動戦士ガンダム』(テレビ朝日系)でブレイクする前の富野由悠季監督ですね。

紀里谷 そうです、あの富野さん。オリジナルの『キャシャーン』は救われない物語なんです。多分、僕が撮った『CASSHERN』を批判していた人たちは、オリジナル版をちゃんと最後まで観ていないんです。キャシャーンがヘルメットを被っていないとか、犬のフレンダーが出てこないとかで文句を言ってくる。本質的なところじゃない、コスプレ的な次元での批判が多かった。そうしたレベルでの批判は日本だけでしたね。

――ちなみに庵野監督とは交流はあるんでしょうか。

紀里谷 『CASSHERN』が公開された2004年は、庵野さんの『キューティーハニー』(04)もあり、樋口真嗣監督の『ローレライ』(05)も公開を控えていたこともあって、みんなで飲みに行ったりしましたね。それ以降はお話しする機会はありませんでしたが、僕は友達だと思っています。あのときは岩井俊二さんはいなかったけど、みんな仲良しですよ。樋口さんの『ローレライ』のポスターを僕が撮ったりもしていますし。樋口さんも実写版『進撃の巨人』(15)で苦労されてましたよね。でも、『CASSHERN』でデビューした頃はみんな30代ちょっとで、それぞれすごいものを目指していたし、これから実写映画で新しいことができるんじゃないかという希望も感じていたんです。でもね、いつの間にか社会が閉じたものになってしまった。