◆妙に説得力がある演技

 木の上を仰ぎ見る万太郎が、「誰、天狗?」とたずねると、男は「天狗はええにゃ」と答える。間髪入れずに万太郎の元へ舞い降りる。こんな高いところから軽々と飛び降りる神業は、人間離れしている。やはり天狗だからなのか。それとも忍者かなにかか。

 この場面でディーンは、実際にワイヤーで身体をつって飛び降りている。さすが筋金入りのアクション俳優。ワイヤーアクションはお手の物だ。まるでキン・フー監督による香港の武侠映画のワンシーンを見ているよう。というか、ドラマ本編映像よりディーンのスタッフがTwitter上に投稿したメイキング的な映像の方にこそ驚く。ドラマ中の演技がほんとうで、実際の撮影風景が嘘みたいな、そんな錯覚を覚えるからだ。

 ディーンの演技には、妙に説得力がある。だから本作の坂本龍馬が、もしほんとうに天狗だったとしても全然驚く必要はない。