◆“サムライ・スピリット”を体現 

“妙に”と言ったのは、これまでディーンが演じてきた役柄に共通して感じてきたことだからだ。

 岩田剛典と名バディを組んだテレビドラマ『シャーロック アントールドストーリーズ』(フジテレビ系、2019年)では、シャーロック・ホームズと同じイニシャルを持つ誉獅子雄を演じたが、あんな端正でクールビューティな探偵が現実にいるはずがない。

 なのになぜか獅子雄のたたずまいは、すごくリアルだった。しかもコナン・ドイルの原作以上に、カリスマ性を備えたホームズの雰囲気を全身にまとっていた(岩ちゃん演じる若宮潤一がディーンにメロメロの恋人のようでさえあったのだから)。

 特に侍姿のときには、より強烈な説得力を発揮する。2022年公開の主演映画『Pure Japanese』は、『らんまん』とは違い、舞台が現代に設定されているが、これが恐るべき“サムライ”役の怪演だった。

 アクション俳優である立石(ディーン・フジオカ)は、内なる武士道に火がつく。『憂国』の三島由紀夫を想起せる狂気の切腹を演じる場面は、虚実の境界が曖昧になる。

 武士の社会ではない現代であるはずなのに、不思議とリアルな“サムライ・スピリット”(まさにタイトル通り)を体現していた。『らんまん』では、武士の時代の終焉の中、ディーンによって坂本龍馬の幕末武士道精神が貫かれ、浮き彫りになる。