失礼だとは思いながら「ちょっとわからないかなぁ」というと俳優さんは「え?!マジですか?」と驚いた表情を見せたのだ。僕はその表情には何かあると思い「ちなみにそのかおりさんって人は、檜山とどこで会ったって言ってたの?」と聞くと「会ったというか、付き合ってたみたいですけど」。寝耳に水である。僕の元カノに「かおり」という名前の女性はいない。もしかしたら若いころの遊んだ時期にそういうことになってしまった女性かもしれないと思い「ちなみにどのくらい付き合ってた感じ?」と聞いた。付き合った期間が短ければその可能性が高い。

 僕の質問に対し俳優さんは「3年くらいって言ってました」。パニック。いくら物覚えが悪い僕でも3年付き合った女性の名前を忘れることはない。あまりにも身に覚えのないことだったので、その場は誤魔化したような形になってしまったが、そのとき例の「偽物」の存在が僕の頭をよぎった。

 そこからさらに1年後くらいに、とあるライブに出演した。そのライブはテレビで放送されるような大規模なもので、司会や出演者もベテラン芸人さんが多く参加していた。僕と与座で廊下の片隅でネタの練習をしていたとき、司会を務めてらっしゃった「浅草キッド」の水道橋博士さんが僕たちのそばを通過しようとしていた。その瞬間僕たちはネタをやめて挨拶をしたのだが、僕たちを見た水道橋さんの顔がニヤリとした。