しかし芸人の「エピソードトーク」はどこかファンタジーに感じてしまうことはないだろうか? それは普通の生活ではあり得ない奇跡的な出来事や、信じがたい不可解なことが起きているからだろう。これは芸人だから起きるのか、それとも起きるような人が芸人になるのかは定かではないが、実は僕も芸人時代にとても不可解な出来事に見舞われたことがある。

 あれは2000年代前半。僕が芸人を始めて5、6年目といった頃だろうか。その頃は芸人としてそこまで忙しくなかったので、僕は連休を利用して地元の茨城へ里帰りをしていた。里帰りと言っても特にやることはなく、当時レギュラーで出演させてもらっていた「完売劇場」(テレビ朝日系)の台本提出の締め切りが差し迫っていたので、実家でパソコンを使い台本を書いていた。

 集中力があまり続かない僕は台本を書くことに飽きてしまい、エゴサーチをすることに。当時エゴサーチといえば日本最大級の電子掲示板「2ちゃんねる」(現5ちゃんねる)ぐらいしか見るものがなかった。匿名掲示板ということもあり、基本的に芸人スレッドは暴露や悪口などが多いのだが、その日の僕のスレッドは違った。暴露でも悪口でもなく目撃情報が載っていたのだ。

 茨城で見られたのかと思い文章を読んでみると、なんと昨晩、ホーム・チーム檜山が後輩芸人を大勢引き連れ、渋谷のカラオケ店に行き、お酒を浴びるほど飲み暴れていたそうなのだ。これが真実なら檜山はなんとも迷惑な輩なのだが、昨晩僕は茨城県の実家におり、渋谷には行っていない。さらに後輩芸人を引き連れるほどの人望はなく、田舎者丸出しなので渋谷で遊ぶなんてもってのほかだ。