映画がつまらなく、社会が最悪なのは誰の責任なのか?
瞑想を終えた石井教授は、やがて謎の洞窟へと姿を消すことになる。この洞窟は、さまざまな時空に繋がっている。石井教授のあとを追う武田助教は、旧石器人が壁画を描いた古代の洞窟や太平洋戦争中の防空壕の闇にも触れることになる。
石井「洞窟の闇は、未来のシェルターにも繋がっています。もちろん、現代の映画館の闇にも。映画を上映するスクリーンや映画館はとても重要な存在です。動画配信はとても便利で、私も重宝しています。でも、便利な配信だけになってしまうという状況には、不安を覚えます。映画は映画館の闇の中で観ることで集中力が増し、感覚が研ぎ澄まされるわけです。映画の世界だけに没入できる。闇がないと映画館では映画は上映できません。もちろん光も必要であり、それを観る人間の心が何よりも大切です。私の中ではそれは小宇宙だと思っています。そこは万物の創生の源につながっています」
常に実験精神を失わずに走り続ける石井監督は、多くの映画人たちからリスペクトされている。その一方、商業映画での大ヒット作はまだ残していない。町田康原作の異色時代劇『パンク侍、斬られて候』(18)は、綾野剛、北川景子、染谷将太、豊川悦司ら豪華キャストを擁し、東映系で全国公開されたが、興行的に成功したとは言い難い。
石井「いつも全力で映画を撮っていますが、『面白い』という声もあれば、『つまらない』という声も上がります。『つまらない』という声が上がるのは、それは私にまだ映画を撮る技が足りないということです。ジョージ・ミラー監督は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)を70歳で完成させたわけですが、『面白い』という声が上がる一方、『つまらない』という声もある。賛否が割れるのは仕方ないことですが、観客のせいにすることは絶対にできません」