海外と比較して圧倒的にアフターピルの議論が進まなかった理由のひとつには、間違いなく“お金の問題”があると、山本氏も指摘している。診察や処方なしにピルが買えるようになれば、窓口としての病院の収入源は減るからだ。また少子化が進むなか、日本の産婦人科医にとって人工中絶の費用も貴重な収入源になっている。日本の人工中絶数は年間で16~17万件。その費用は患者の自費負担で、15~30万円が相場だ。ざっと計算してみても、240~510億円ほどの産業規模となる。

 ここからは推測に過ぎないが、“外圧”によりアフターピルのOCT化の流れが避けられない以上、処方箋が必要とされる可能性が高く、相対的に高価な経口中絶薬の認可を同時並行した方が、医療業界の利権を守れるという判断があったのかもしれない。

 中絶については副作用の問題以外にも、宗教的・文化的な価値観が各国の状況に反映されるという反論もありそうなものだが、「アフターピルはUAEやタイ、ミャンマーでも日本より簡単かつ安価に購入できる」(山本氏)という。