「例えば、薬が何週目まで使えるかなどしっかり周知されれば、女性が中絶について考えたり、検査を受ける精神的余裕がしっかり持てるようになるはずです。アフターピルの場合、存在や使い方を知らなかったため、取れる行動をはなから諦めてしまったことが過去にあったという人が多くいました」(山本氏)

 もうひとつ気になるのは、なぜこのタイミングで経口中絶薬の承認に関する議論が浮上したかだ。

 長らくアフターピルの問題に取り組んできた山本氏は、「正確な背景はわからない」と前置きした上で、「認可に動くことができた要因として、国内の臨床試験結果や、製薬会社による海外での十分な実績、WHOのガイドライン、女性の権利をめぐる世界の情勢などがあるのでは」と分析している。

 なお一度、俎上に載ったアフターピルのOCT化は、今でも牛歩のように遅々として進んでいない。使用の主体である女性たちの多くが、賛成の声を挙げているのにもかかわらずだ。ちなみにデジタル診療プラットフォーム「クリニックフォア」がユーザー女性920人を対象に実施した「アフターピル(緊急避妊薬)に関する実態調査」によれば、OTC化の賛成は約9割に達している。