4.スフィンクスの飼育のポイント
スフィンクスはほとんど毛がないため、低温やケガ、虫刺され、日焼けなどから皮膚を保護しなければなりません。気温や状況によっては暖かい寝場所を用意する、洋服を着せるなどの配慮が必要になるでしょう。
また、スフィンクスの皮膚は脂漏性の傾向にあり、タオルで体を拭く、シャンプーをするなど定期的なケアが必要です。ただし、頻繁なシャンプーはかえって皮膚のpHを崩してしまうため、洗い過ぎにはご注意ください。
もちろん、耳や歯、爪などのグルーミングは必要になります。落ち着いてケアができるよう、子猫のうちから少しずつ慣らしておきましょう。
食事に関しては、スフィンクスの場合、有毛猫より必要カロリー摂取量が多いとされるので、高栄養で良質なフードを与えるといいでしょう。
その他、スフィンクスは身体能力が高く、ちょっとした隙間から脱走したりしないよう、脱走防止対策も忘れないようにしたいものです。
5.スフィンクスのかかりやすい病気・ケガ
スフィンクスは健康的な猫種ですが、やはり気をつけたい病気やケガもあります。
たとえば、心臓疾患や腎臓疾患、尿石症、皮膚のトラブル、歯のトラブル、脱走による事故など。
歯周病は歯だけの問題ではなく、進行すると歯周病菌の毒素が血流に乗って全身に回り、心臓疾患や腎臓疾患など他の病気に悪影響を与えてしまうことがあるので軽く考えることはできません。可能な限り歯磨きをするとともに、日々のお手入れのついでに歯や口の中のチェックもするようにしましょう。
若齢~成猫
子猫~若い猫では、特に以下のような病気・ケガには気をつけましょう。
事故・ケガ
特に若い猫では好奇心からちょっとした隙間から外に出てしまうこともある。
また、誤飲にも注意を。皮膚トラブル
無毛のスフィンクスは細菌や真菌、ダニ、アレルギー、日焼け、擦り傷などによる皮膚トラブルを起こしやすい。熱中症
特に子猫は体温調節が十分にはできないため、暑い時期の熱中症には注意を。
成猫〜高齢猫
そして、成猫~高齢猫では、以下のような病気に注意が必要です。
尿石症
成分により、いくつか種類がある結石の中で、猫ではシュウ酸カルシウム結晶とストルバイト結晶が多いと言われる。慢性腎臓病(慢性腎不全)
ウイルス感染や免疫疾患による腎炎、尿路閉塞、外傷、中毒などによって腎臓の機能が低下し、それが慢性化する。老齢の猫での発症が多く、死亡率が高い。肥大型心筋症
心臓の左心室の伸筋が肥厚することで心不全を起こす心臓疾患。スフィンクスでは遺伝的にこの病気を発症しやすい。関節トラブル
コーネル大学の猫保健センターによると、中年期~10歳以上の猫のほとんどが関節炎をもっているという研究結果もあるとのこと。腫瘍・癌
高齢になるほど腫瘍・癌のリスクが高まる。皮膚腫瘍の場合、猫では半数以上が悪性と言われる。認知症
食事やサプリメントで認知症予防を心がけるとともに、シニア期に入ったなら愛猫の行動にも注意を。
6.スフィンクスの平均的な寿命は?
スフィンクスの平均的な寿命は、12歳~15歳程度。
一方、一般社団法人ペットフード協会の「令和4年全国犬猫飼育実態調査」では、日本の猫の平均寿命は15.62歳となっています。
これを見る限りでは、やや寿命が短い猫種と言えそうですが、中には32歳まで生きたGrandpa Rex Allenという名のスフィンクスもいます。
7.まとめ
スフィンクスは気質的には家庭向きの猫ですが、無毛であるためのケアや配慮は必要になります。
無毛で抜け毛がほとんどない分、猫アレルギーになりにくい猫種だと考える人たちもいますが、アレルゲンとなるタンパク質Fel d 1*は毛以外にも唾液や皮膚、尿、フケなどに含まれるという点において他の猫種と大きくは変わりません。猫アレルギーを引き起こしにくいことは事実ではありますが、いずれにしても非アレルギー性というわけではありません。
そのため、猫アレルギーになりにくいことを条件に猫を探すのであれば、どちらとも言えないということになるでしょう。
いずれであっても有毛猫に比べてひと手間かかることは確かで、エネルギッシュで愛嬌のある性格とともに、それを楽しみと捉えることができる人にはより向く猫と言えます。どうぞ良い出会いがありますように。
*Fel d 1=人が猫アレルギーになる場合、猫の体から産生されるFel d 1~Fel d 8と呼ばれる8つのタンパク質がアレルゲンとなる。そのうちFel d 1がもっとも多くを占める。
(文:犬もの文筆家&ドッグライター 大塚 良重)
※猫は生き物であるため、寿命や性格・気質、行動、健康度などには個体差があります。
【参照元】
・The International Cat Association(TICA)「The Sphynx Breed」
・THE CAT FANCIERS’ ASSOCIATION「About the Sphynx」
・ASIA CAT CLUB「スフィンクス– Sphynx」
・E-GOV法令検索「昭和四十八年法律第百五号 動物の愛護及び管理に関する法律」
・公益社団法人 日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査及び飼育者意識調査調査結果(平成27年)」
・Cornell Feline Health Center「Is Your Cat Slowing Down?」
・一般社団法人ペットフード協会「令和4年全国犬猫飼育実態調査」
提供・犬・猫のポータルサイトPEPPY(ペピイ)
【こちらの記事も読まれています】
>犬が吐く理由は?犬の嘔吐の原因や対処法、子犬の嘔吐について獣医師が解説
>【獣医師監修】「猫が撫でられるとうれしいポイントと絆を深めるコミュニケーション術」
>犬の咳、くしゃみ、鼻水の原因とは?考えられる病気と対処法を獣医師が解説!
>猫に好かれる人・嫌われる人の行動や特徴とは?
>犬同士が仲良しの時に見せる行動・サインって何?