僕はその日たまたま目にした『オンバト』で初めて“ネタ”という概念を知り、その魅力に脳天を撃ち抜かれたのだ。DonDokoDonがマイクの前でおしゃべりをしているだけで爆笑をかっさらって優勝したのを観て初めて「漫才」というものを認識したし、テツandトモが音楽に合わせてたくさんの顔芸をしていて腹がちぎれるほど笑った。当時「これは何というジャンルなんだろう」と思っていたが、後にも先にもテツandトモしかやらない完全に彼らのオリジナル芸だった。あれは一体なんだったんだ。でも本当に面白かったし、誇張なしに人生でいちばん笑ったと思う。

 合宿から帰った僕は「『オンバト』を毎週観よう」と決意し、親に録画を頼んでいわゆる通常回を初めて観たのだが、初めて観た通常回でまたしても衝撃的な出会いを果たす。

 ラーメンズのネタを観たのだ。「ボケとツッコミ」という役割分担が曖昧で、だけどなぜか笑っている……これは一体どんな感情? と少し怖くなりつつ「お笑いってめちゃくちゃ奥深い」と思ったのを覚えている。