◆夫はたしかに生きている

 お店から出ると、すっかり空は晴れ間が見えるほどまで回復。まるで私たちの気持ちを表しているようで、足取りも幾分軽くなりました。

「よく考えたら、小さいうちに腫瘍が見つかってよかったじゃん! もしこの検査の直後に転移して、見つけるのが半年後になってたら、治療もできなかったかもしれないよ」

「それもそうだね。とりあえず、今できる治療について次の診察で聞いてみようか」

 帰り道では、2人とも前向きに治療についての話ができるようになっていました。杖をつきつつも、しっかりと足を踏みしめながら一歩一歩進む夫は、確かに生きていました。

 この約半年後に、夫は帰らぬ人となりましたが、グルメな彼の人生の終盤に、美味しいうどんの記録を更新させることができ、ひそかに自分を誇らしく思っています(笑)。

 大切な人と食べた、弔いメシ。今も前向きな気持ちになりたい時に食べています。またあの時の夫から、生きるパワーをもらえる気がするのです。

<文/関由佳>

【関由佳】

筆跡アナリストで心理カウンセラー、カラーセラピストの資格も持つ。芸能人の筆跡分析のコラムを執筆し、『村上マヨネーズのツッコませて頂きます!』(関西テレビ)などのテレビ出演も。夫との死別経験から、現在グリーフ専門士の資格を習得中。Twitter/ブログ