◆半年ごとの脳の検査で転移が発覚
2019年の秋、夫の脳の定期検査と診察に、私たち夫婦は病院を訪れました。2017年に肺がんにより脳梗塞を発症し、それから半年ごとに定期検査をしていました。
実はその時期、夫は何種類目かの抗がん剤治療中でしたが、血液検査での数値が徐々に高くなり、悪化の兆候が見え始めてきた頃でした。とはいえ、夫は「自覚症状もないし、まだ大丈夫」と楽観的に捉えていました。
検査を終え、診察までの長い時間をぼんやりと待っていると、夫が急に「帰りはうどんが食べたい」と言い出しました。その時、以前取材で行った讃岐うどんのお店が近くにあることをふと思い出し、夫に提案。ずっと、あのお店の美味しいうどんを夫に食べさせてあげたいなと思っていたのです。
そのうどん屋さんが、いかにこだわっていて美味しいかを夫に説いているうちに、診察の順番が回ってきました。いつも「脳は変わりないですね」と言われて帰るので、今回もそんなもんだろうと軽い気持ちで病室に入ると、医師が少し気難しい顔をしているよう……。瞬間、不吉な予感が頭をよぎりました。そして、医師にこう告げられたのです。
「脳にいくつか腫瘍が見られます。もしかすると、肺がんによる脳転移の可能性があります」
脳転移。今まで読んできたたくさんの闘病ブログで、更新が途絶える少し前によく見たな、と思い出し、背筋が冷たくなるのを感じました。この日初めて、いよいよそこまで迫ってきている、という現実を知らされたのでした。