女性の連帯と男女の交流が現代においてDJ RYOWや¥ellow Bucksの優れた作品として結実している背景をたどってきたが、最後にもう一作、東海エリアの重要なヴァイブスを象徴する楽曲を紹介したい。

 愛知県知立市出身のラッパー・C.O.S.A.は、2017年のEP『Girl Queen』で聖母マリア、母親、少女、シングルマザー、ラッパー、ダンサー、あらゆる女性に対して愛を歌った。表題曲で歌われる「男は変わる/君を守ろうと/世界が回る」というリリックはC.O.S.Aらしく朴訥としたもので、そこで描かれている女性像は、ヒップホップシーンに根強い家父長制の価値観としても捉えられるかもしれない。

 ただ、多様な女性の側面に光を当てたコンセプチュアルな作品として、少女の尊厳を綴ったECD「ECDのロンリーガール」やシングルマザーへのリスペクトを示したK DUB SHINE「今なら」といった楽曲とともに、本作はヒップホップ・フェミニズム史における重要な1枚として認識されるべきであろう。

 そして『Girl Queen』のような新たなコンセプトの作品は、東海ヒップホップで脈々と耕されてきた男女交流史の側面とあわせて受容されることで、より一層の意義を持つに違いない。日本のヒップホップが、東海エリアの歴史から学べることは多くある。

C.O.S.A. 「Girl QueenLive at POP YOURS 2022)」