エリア052のプライドとリスペクトがぎゅうぎゅうに詰まった楽曲群の中で、Tinaのボーカルはファンキーなサウンドに高揚感を与え、MaRIは〈やりたいことやるてか今やれてる/シングルマザー/ビートの上に乗ってる〉〈中身のないDickはMacaroni〉という自身を誇ったパンチラインを繰り出す。

 デラックス版ではAwichまでもが駆け付け、この異常な熱量で披露される052オマージュに対し〈QueenならQueenの仕事をGet it done/誰が何と言おうと私の出番/勝利を祝い帰る時には/島の子全員に被せるCrowns yup〉というリリックを添えて涙を誘うのだが、つまりフッドをテーマにした近年のヒップホップ作品の中でも金字塔となるであろう歴史的傑作を、ここでも東海内外の優れた女性ラッパーが支えている。

¥ellow Bucks「Shut Upfeat. MaRI)」

 一体、この東海勢の作品にみなぎる、豊富な演出による素晴らしい効果は何なのだろうか。豪華で重厚感があり、かたや軽薄でもある。ヒップホップのコアに迫る渋みと色気あふれるチャラさが共存しており、それを成立させているのは男女混合の多彩なコラボレーションである。この自由な流動性は決して一朝一夕に醸成できるものではなく、東海エリアのシーンにカルチャーとして根付いているがゆえの成果だろう。そう、その交流は、さかのぼればTOKONA-Xの「女子大ROCK」(2013年『トウカイXテイオー』収録)に LOKU、WATT、Killa-Dらに交じってANTY the 紅乃壱が名を連ねていた頃から、ごく自然に行われていたのだ。