長きに渡りシーンを盛り上げ、性別や年代を問わずハブ的な役割を果たしてきたレジェンドであるANTY the 紅乃壱は、今〈ANTY the KUNOICHI〉名義で再び精力的に活動を展開している。

 2021年に11年ぶりにサプライズリリースされた11作目のアルバム『猫だまし』は、改めての自己紹介で幕を開ける「アイデンティティ」や、初めて自身でトラックメイクを手がけた楽曲「nazo」等を収録した力作だ。

 また、現在彼女は女性のラッパーやDJを多く集めたパーティ「MADD CATS」も不定期で開催。さまざまな世代の女性アーティストをフックアップし続けており、シーンの功労者として日本語ラップ・東海エリア編の歴史を今もなお更新し続けている。

 ひなりん、ししど等の新たな女性ラッパーがこの界隈から現れており、連綿と続く東海の熱を若い力が継承している。女性アーティストが集うリアルの場でのパーティとしては、これもまたANTY the KUNOICHIがかつてDJ AKIや蝶々らと開催していた「Jelly Belly」というDJイベントもあったと聞く。まさに、作品においても現場においても女性ラッパーたちによる連帯がこのエリアの文化を形作ってきたし、そこに男性側も加わることで、自然と協働が生まれるような土壌が培われたのだろう(事実、MADD CATSには女性の出演陣に交じってDJ RYOWなど男性も出演している)。

ANTY the KUNOICHI「アイデンティティ」