――これまでも、「ハゲタカ」(07年/NHK)や「外事警察」など、リアリティーのあるドラマを作られてきましたが、国際霊柩送還士という実在の職業を描く上で大切にされたことは何ですか?
「第一に、うそがないようにすることです。特に、視聴者にとって初めて見聞きする体験である場合、間違った情報で認識されてはいけません。でも一方では、ドラマとして面白くしなければならない。だからこそ、国際霊柩送還士のプロであるエアハースの皆さんには、たくさん相談をしました。特に今回は、ご遺体が死の現実そのものであるため、表現が非常に難しい。“いかなるご遺体にも向き合う過酷な任務”であることも描きたかったので、事前にメークや造型物などを使ってご遺体用のカメラテストを行うなど、試行錯誤を重ねましたし、映像で見せる加減についても慎重に話し合いました。一つ一つの死、どれもがドラマチックで異なるのに、描かれれば描かれるほど、死が文字や記号のように表現されることも多いので…」
――誰もが感情移入することである一方、描かれ方によっては記号と化してしまう、と…。
「刑事ドラマなどで顕著ですが、ドラマの中の死は、記号のように流されて表現されることが多いと思います。今回は死が一つのテーマだったので、そこをいかに丁寧に描くかが大事なポイントだと考えていました。個人的な話ですが、ドラマの企画がスタートして2カ月後に母が突然他界しまして、その時に感じたこと、発見したことなどもドラマに盛り込みました。細かな部分の表現が豊かになることで、記号化されないものとして感じてもらえるのではないかと思っています」