タモト清嵐の出演が決まり、雨が降る情景が浮かんだ

――山上容疑者をモデルにした川上達也役には、若松孝二監督の『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(08)に出演したタモト清嵐を起用。

 候補は何人かいたんですが、何のけれんもなく「やります」と答えたのは、彼だけだった。山上をモデルにした役をやると今後の仕事にも関わってくる可能性があるから、芸能事務所は嫌がるものですよ。でも、彼は快諾してくれた。『実録・連合赤軍』もよかったし、白石和彌監督の『止められるか、俺たちを』では僕の友人でもある秋山道男をとても可愛く演じてくれた。芝居がうまいことは分かっていました。タモトが出ると言ってくれて、これで決まりだと思いました。配役が決まったというだけでなく、映画として決まったなと思えたんです。僕の頭の中に、川上の部屋の中にずっと雨が降り続けている情景が浮かんできたんです。

――主人公の苦悩と孤高さを感じさせる音楽は、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』でもおなじみの大友良英氏。

 『あまちゃん』(NHK)ですっかり売れた彼は、僕の映画は予算がないことを分かっていて参加してくれた。僕が日本に帰ってきてから撮った『幽閉者 テロリスト』(07)と『断食芸人』(16)も彼が音楽を担当してくれていたので「山上の映画をつくるけど、またやる?」と訊いたら、「やるやる!」とね。脚本を送って「フーガでやりたい」と伝えると、2~3時間でテーマ曲をつくってくれた。でもね、あいつもセンチメンタルなところがあるから、主人公に寄り添い過ぎた音楽になっていたんです。それで、あまり寄り添いすぎないように、もう少しシンプルにと頼んだら、「分かった」とすぐにバンドを編成し直した曲にしてくれたんです。その曲を映画には使っています。