名作のリメイクにして大スター、トム・クルーズ主演のSF超大作『宇宙戦争』(05)では、逃げ惑うトムのすぐ傍らの人間が、謎の三脚歩行機械から発される怪光線で一瞬のうちに次々と灰になり、その灰(つまり粉々になった遺体)をトムが顔に浴びまくって真っ白になるという、心理的にかなりきつい残酷描写が炸裂していた。

 また同作には、「のどかで美しい川面に、大量の死体が音もなく流れてくる」状況を、年端も行かないあどけない少女(ダコタ・ファニング)に遭遇させて、に顔をひきつらせる――という、なかなかにサディスティックな残酷シチュエーションも用意されている。

 いずれも映画的なケレン味や画(え)的な美しさが極限まで追求されており、そのシーンだけを何度も繰り返し観られるほど、その完成度は高い。言ってみれば、「スピルバーグ、どうしてもこれが撮りたかったんだな」感に満ちている。

「目を覆うばかりに残酷だけれど、このめちゃくちゃ燃える(萌える)、映(ば)えるシーンを絶対に映像化したい!」。その欲望を叶えるために後付けで物語を作っている、あるいは後からそれに適う原作を探しているのではないか? と思ってしまうほどに、スピルバーグの「この画が撮りたい欲」は凄まじい。